『床下のほら吹き男』は、2009年のMONO第36回公演作品です。
観劇三昧で観たので、感想をご紹介します。
『床下のほら吹き男』作・演出・キャスト【登場人物】
●作・演出
土田英生
●キャスト【登場人物】
水沼健【床下の男】
奥村泰彦【鈴置】
尾方宣久【青木】
金替康博【戸村】
土田英生【浜島】
亀井妙子 (兵庫県立ピッコロ劇団)【長女・絵莉子】
山岡徳貴子 (魚灯)【次女・香奈】
ぼくもとさきこ (ペンギンプルペイルパイルズ)【三女・ことみ】
松田青子【四女・美季】
『床下のほら吹き男』あらすじ
山の斜面に経つ大きな旧家。
そこに暮らす四姉妹はそれぞれに隠し事を持っていた。
ある時、家の中にあるおかしな通風口を発見し、リフォーム会社に工事を頼む…が、この会社は詐欺まがいのインチキ会社。
工事を始めようとした矢先……突然に床下から一人の男が現れる。
とにかく男が話すことは全てが嘘なのだ。
姉妹、リフォーム会社、それぞれの嘘が明るみに出たとき、突然男は姿を消してしまう。
床下のほらふき男は果たして何者だったのか?
『床下のほら吹き男』感想(ネタバレあり)
随所に笑いを散りばめながらも、人間の弱さに痛みを感じてしまう作品でした。
また、脚本の構成や意味をよくよく考えてみると、新しい発見もあって何度も観たい作品でした。
以下からは、ネタバレを含みます。
まだ観ていない人は、観劇三昧(有料)をオススメします。
“嘘”の理由
『床下のほら吹き男』には、様々な”嘘”をついている人たちが登場します。
青木の言うことには常に否定する鈴置。
会社を維持するために、長女・絵莉子からお金だまし取ろうとする浜島社長。
男性と付き合ったことのないのに、男性をおとすテクニックを持っていると言う三女・ことみ。
妹三人が怖くて優しくしていた(優しいと思われていた)長女・絵莉子。
次女・香奈の婚約者と関係を持っていた四女・美季。
などなど。
では、彼ら・彼女らはなぜ嘘をつくのか?
登場人物は皆、自己保身や承認欲求のために、嘘をついていたのではないでしょうか。
承認欲求とは?
ウィキペディアでは、以下のように説明しています。一部を紹介します。
承認欲求は承認されたい対象によって、おおむね2つのタイプに大別される。ひとつは他人から認められたいという欲求であり、もうひとつは自分の存在が理想とする自己像と重なるか、あるいはもっと単純に今の自分に満足しているか、という基準で自分自身を判断することである。前者を他者承認と呼び、後者を自己承認と呼ぶ。
劣等感の強い人間や、情緒不安定な人間は自己承認が困難だったり、あるいはその反対に過大な自己評価をしがちであることは、よく知られている事実である。また、思い込みが強い人間や被害妄想に囚われている人間の中には、幻想の他者を造り出してしまうために、自分が他者承認の問題であると思っていても、実際には自己承認の問題であるという錯誤がしばしば発生する。
出典:Wikipedia
『自分が自分であるために嘘をついて生きる』
とするならば、平気で次々と嘘をつく床下の男は、誰よりも承認欲求の強い男とも考えられます。
一見、おかしな人のようで、実は登場人物の中で一番悲しい人間なのかもしれません。
なぜほら吹き男に騙されたのか
床下の男は、他人(観客)から見ると、ただのほら吹き男です。
名前も、職歴も、コロコロ変わります。
誰が見たって、怪しくて信用できない男。
でも、そんな男に騙され、彼ら・彼女らの関係は崩壊していきます。
こんな怪しい男に、なぜ騙されてしまったのか?
土田英生さんは、記者会見で以下のように答えています。
人というのはちょっと弱ると変に他人の意見に翻弄されるし、「あなたはこうだよ」とか言われると、それにすがって間違いを起こしてしまうということがあります。今回は、床下のほら吹き男が言った言葉によって翻弄される弱い人々の人間模様も作品のみどころとなっています。
人の弱みをうまく利用する人っていますよね。
自分にも思い当たることがあるので、笑えないところもあるんですよね。
ちょっと怪しいけど、ひとつ言い当てられると、その他の言ってることも本当のように思えてくる。信用してしまう。良いように解釈していまう。
観客からは彼ら・彼女らが滑稽な人たちに映るけど、でも自分たちも同じような経験をしているのではないでしょうか。
関係性が崩壊した先に”希望”
床下の男によって、リフォーム会社の4人や姉妹の関係性は崩壊していきます。
その後、社長は逃げて残りの3人で新会社でやり直す。
長女は留学。
四女は次女の元婚約者と付き合う。
三女は青木とデート。
などなど、それぞれが新しいスタートを迎えます。
深読みし過ぎかもしれませんが・・・。
冒頭のシーンでほら吹き男が出入りする扉を見つけます。
その扉を開けようとする鈴置を青木は制止します。
しかし、鈴置は
「扉の向こうに希望があるかも。」
といって開けようとします。
扉を開く=素直になる
だとすれば、素直になった(真実を告げた)ことで関係性は崩壊してしまったが、そこから新しいスタート、希望も新たに生まれる・・・。
こんな解釈は、やっぱり深読みし過ぎでしょうか。
MONO『床下のほら吹き男』の感想まとめ
MONOの作品は、派手な演出で魅せるものではなく、淡々とストーリーが展開していきます。
しかし、笑いを交えながら人間の弱さを見せてくれます。
また、登場人物の台詞や設定の理由を考えると、いろいろな発見があります。
MONOの他の作品も見よう。