2008年公開『ブタがいた教室』。
平成2〜4年大阪北部にある豊能町立東能勢小学校で実際に行われた、900日間の「命の授業」を基に作られた映画です。
原案は、黒田恭史さん著『豚のPちゃんと32人の小学生―命の授業900日』。
第21回東京国際映画祭では、「コンペティション部門 観客賞」を獲得しています。
『ブタがいた教室』あらすじ
新米教師の星先生は6年2組の26人の子供たちと一緒に卒業までの一年間「食べる約束」で子ブタを飼い始める。しかし毎日世話をする中で芽生える愛情。そして迎える卒業式。「食べる、食べない」。大激論の末、彼らが出した“答え”とは?
監督・キャスト
監督・・・前田哲
星先生・・・妻夫木聡
仁科教頭先生・・・大杉漣
池沢先生・・・田畑智子
小鷲先生・・・池田成志
伸哉の父・・・ピエール瀧
音楽教師・・・清水ゆみ
雄馬の父 ・・・近藤良平
力也の父・・・樋渡真司
甘利花の母・・・戸田菜穂
菜野花の母・・・大沢逸美
高原校長先生・・・原田美枝子
他
原作(原案)
原案は、2003年に出版された黒田恭史さん著『豚のPちゃんと32人の小学生―命の授業900日』。
平成2〜4年に、大阪市の小学校で行われた900日間の「命の授業」の記録です。
実際に行われた「命の授業」は900日間ですが、『ブタがいた教室』では4月から卒業するまでの1年間、また原案では生徒32人に対して、映画では26人となっています。
感想(ネタバレもあり)
浅はかだった先生と生徒たち
新米教師の星先生(妻夫木聡)が考えた「命の授業」。それは、食べることを前提に生徒たちが豚を飼うこと。
普段食べている豚と触れ合うことで、「命を頂いている」ことを実感するきっかけになるかもしれない。
しかし、星先生は理想や感情が先走っていたのかもしれません。
学校に認めてもらうために、高原校長(原田美枝子)と仁科教頭(大杉漣)に説明に行くシーンがあります。
高原校長は星先生に、
「想像している以上に大変だと思いますよ。その覚悟があるなら進めてもらって結構です」
と言い、この言葉に対して星先生は、
「ありがとうございます。覚悟を持って頑張ります。」
と答えます。
このときのセリフが、星先生の浅はかさを象徴するものに映りました。
また、生徒たちも浅はかでした。(子供なので仕方ないのですが)
学校で豚を飼うという「非日常」に喜び、「最後は食べる」ことに実感が湧いていなかったでしょう。
Pちゃんと名前をつけたり、小屋を作ったり。
そして、一緒に過ごす時間が増えるに連れ、愛情が芽生えしまい・・・。
議論シーンの”リアル”な言葉
この映画では、豚のPちゃんをどうするのか、生徒たちが議論するシーンが何度かあります。
議論するシーンは、ドキュメンタリーではないかと思ってしまったのですが、実際に子どもたちが議論しているようです。
前田哲監督は、インタビューで以下のように答えています。
――ディベートのシーンはカメラを7台ほど回していたそうですが、時間はどれくらいかかったんですか?
もちろん編集もしていますが、実際のディベートですから。集中力が続く90分を目安として休憩を挟んで、何セットかやりました。子どものなかには押し出しの強い子も弱い子もいるので、思ったことが言えないこともあります。4年生の子も2人混じっていましたし。それをどう引っ張り出すかですよね。あと妻夫木君も一人ひとりに「お前、どうなんだ」と聞いていった。
「命の授業」について成功?失敗?
この映画や原案となった書籍については、様々な意見があったようです。まさに賛否両論。
原案となった書籍は読んでいませんが、映画を観て賛否両論があったことに納得です。
「命とは何か?」を考えてもらうために新米教師が選んだ「豚を飼って食べる」方法は良かったのか。
それは、よくわかりません。
その答えがわかるのは、当時「命の授業」を受けた生徒たちと先生だけです。
平成2〜4年に行われたということなので、現在40歳くらいになっているのでしょうか?当時のことを今どのように感じているのか、聞いてみたいものです。