2014年に公開された映画『渇き。』監督・中島哲也さん、主演、役所広司さん。
原作は、深町秋生さんの推理小説『果てしなき渇き』。
※映画の性質上、感想内に暴力的な言葉が含まれています。
あらすじ
元刑事のロクデナシ親父・藤島昭和(役所広司)に離婚した元妻から連絡が入った。成績優秀なうえ、容姿端麗、学園のカリスマでもある女子高生の娘・加奈子(小松菜奈)が失踪したという。自分のせいで全てを失った男が、再び“家族”を取り戻すべく、姿を消した娘の行方を追うことに。娘の交友関係をたどって行く先々で、語られる“知らない加奈子像”に戸惑う藤島。想像を超えて肥大し、踏み入れるほどに見失う娘の正体。
やがて藤島の激情は、果てしない暴走をはじめるーー。
監督・キャスト
監督・・・中島哲也
藤島昭和・・・役所広司
加奈子(娘)・・・小松菜奈
「ボク」・・・清水尋也
浅井・・・妻夫木聡
遠藤・・・二階堂ふみ
森下・・・橋本愛
長野・・・森川葵
桐子(元妻) ・・・黒沢あすか
咲山・・・青木崇高
松永・・・高杉真宙
辻村(医者)・・・國村隼
愛川・・・オダギリジョー
東・・・中谷美紀
感想(ネタバレあり)
あらすじや予告動画では、”劇薬エンターテイメント“、役所広司演じる元刑事・藤島昭和を”ロクデナシ“と表しています。
しかし、この言葉には違和感があります。
私には、藤島昭和が”悲しい人間”、”愛し方を知らない”ただただ不器用な人間に映ったからです。
愛し方を知らない男と、愛を失った人や愛を知らない人たちとの物語。
クサイ言葉をたくさん並べてしまったけど・・・、”愛が渇いてる人たち”の映画と感じました。
ここから、ネタバレも含めて感想を紹介していきます。
冒頭2つのセリフ
映画の冒頭、藤島昭和の妻(黒沢あすか)の「愛している」という言葉(後にわかるけど不倫相手に言った言葉)と、殺意を口にする藤島昭和(役所広司)から始まります。
この2つの短いセリフ、この映画すべてを表していると言い過ぎではないかもしれません。
愛しているから、裏切られた時、奪われた時に狂気に変わってしまう。
藤島昭和は何度も殺意ある言葉を口にします。しかし、愛していることの裏返しのように思います。
特に娘・加奈子(小松菜奈)への言葉は、そのように感じてしまいます。
グロい映画で終わらせるのは勿体ない
『渇き。』はR15指定の映画だけあって、グロテスクなシーンがいくつかあります。
私個人的には、グロい表現って苦手なタイプ。観ていて疲れるから。
また、エンタメ要素を強いグロい映画には否定的。
でも、この映画のようなジャンル?演出では必要だったのかもしれない、と感じました。
「痛み」を表現する必要性がある映画だと思ったからです。
ただ・・・ひとつだけ気になるシーンが。
それは、後半のオダギリジョーの銃撃戦。このシーンはコメディ刑事ドラマのような軽さを感じてしまい、苦笑いしてしまいました。
ラストの言葉
娘が埋められた雪山で、必死に掘り起こそうとする藤島昭和。
すでに亡くなっているが、藤島は言います。
「あいつはまだ生きている。」
「あいつをおれの手で、ちゃんとぶっ殺す。」
常識で考えると、矛盾している言葉。
しかし、自分の娘がしてきた責任、父親としての責任を果たすことだと考えたのかもしれません。